最新判例
名古屋高裁・平成25年2月27日判決(全文PDF)
1審で時効で敗訴した件につき,名古屋高裁で逆転勝訴判決を得ました。
相手はグローバリー(現,ニューザック)で,取引終了は平成14年3月19日ですが,その後,長い間,被害回復を諦めていて,弁護士に相談をしたのが,取引終了から約9年経った平成23年3月4日,提訴が同年5月6日です。
名古屋高裁は,不法行為の消滅時効の起算点を,「被害者において,加害者に対する損害賠償請求をすることが事実上可能な状況の下において,それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味する」とした上で,本件においては,弁護士から,本件取引による損失について,違法な商品先物取引による損失による被害である可能性がある旨指摘されたことにより,不法行為による損害賠償請求権についての損害及び加害者を知ったものであるとして,弁護士に相談をした平成23年3月4日をもって消滅時効の起算点としました。
なお,先物会社側から,「通常人が当然知りうる報道すら知らず,漫然と9年間も権利行使しなかったことは、控訴人の怠慢にほかならない」として遅延損害金の認容範囲の判断において考慮すべきと主張された点については,「控訴人において報道を知る義務があるわけではない」として,業者側の反論を排斥しています。
控訴審判例・平成22年06月24日判決(全文PDF)
本件の特徴は、売買差益(約215万円)があるが、手数料が多額のため損害(手数料等1425万円)が出ている事案でした。(税込損害1280万円)
課税庁の理屈は、本件和解金は、過年度における雑所得の減算要因として考慮される必要経費に当たるから、本件和解金を非課税とすることは、2回非課税の利益を与えることになり、施行令30条柱書きの括弧書きにいう「所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補填するための金額」に当たるから課税されるというものでした。
これに対し判決は、「差し引き計算した金額(注1280万円のこと)は、上記のとおり、一連の本件先物取引における全体として違法な三晃商事の営業担当者の行為によって生じた損害であると評価されるものであって、被控訴人が支払わされた多額の委託手数料等は、委託者の利益を度外視し、三晃商事の利益のために、その取得のみを目的とする違法な行為による損害そのものであって、差し引き計算上認められる売買差益を得るための必要経費などではない。このように、違法に手数料の支払いをさせるなどしたこと自体が被控訴人の損害を発生させる不法行為であり、本件和解金は、そのような不法行為によって被控訴人が被った損失に対する原状回復のための損害賠償金の一部に過ぎないのであるから、施行令30条柱書き括弧書きにいう「所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補填するための金額」が含まれていると考える余地はない」
最高裁判例・平成21年12月18日判決(PDF)
「商品取引員の従業員は,信義則上,専門的知識のない委託者に対し,売りの取組高と買いの取組高とが均衡するように自己玉の建玉を繰り返す取引手法を用いている商品の先物取引の受託前に,同手法を用いていること等の説明義務を負う」とした判決を出しました。
最高裁判例・平成21年7月16日判決(PDF)
一審(東京地裁),控訴審(東京高裁)でいずれも敗訴した,(差玉)向かい玉に関する事件について,最高裁第一小法廷は,平成21年7月16日,原審判決を破棄し,差玉向かいについて,商品取引員は委託者に対し説明義務及び通知義務を負うとした判決を出しました。