経産省・農水省の勧誘規制の見直し
改正省令に対する反対意見・資料
各種団体の反対意見
- 日弁連 「商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明」
- 弁護士会「全国各地の弁護士会の反対意見」(PDF)
- 主婦連 「商品先物取引における不招請勧誘禁止規制の緩和に抗議し、その撤回を強く求めます」
反対意見資料
- 商品先物不招請勧誘省令の問題点(PDF)
- 商品先物取引に関する不招請勧誘禁止規制の緩和問題(2)(PDF)
主な新聞記事
- 朝日新聞(1月23日)先物取引の勧誘、規制緩和へ 収入や年齢に一定条件
- 〃 (1月23日)投資家保護に懸念も 先物勧誘、業界要望で緩和へ
- 毎日新聞(1月23日)商品先物取引:勧誘の規制緩和へ 経産省と農水省
- 日経新聞(1月24日)先物勧誘、未経験者にも 6月規制緩和、市場振興狙う 収入など条件なお慎重論も
- 中日新聞(2月05日)「被害者増える」反発強く 先物取引の勧誘規制緩和
- 日本消費経済新聞(2月5日)「被害者増える」反発強く 先物取引の勧誘規制緩和
当会の改正省令に対する意見書(要約)
提出意見書(詳細版)PDF
「商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令」の速やかな廃止・撤回を求める意見書
2015年2月16日
経済産業大臣 殿
農林水産大臣 殿
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当)殿
消費者庁長官 殿
消費者委員会委員長 殿
先物取引被害全国研究会
代表幹事 弁護士 斎 藤 英 樹
事務局長 弁護士 向 来 俊 彦
経済産業省及び農林水産省は、2015年1月23日、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定め、商品先物取引について不招請勧誘(勧誘を要請しない個人への訪問や電話による勧誘)の禁止規定を緩和することを公表した。
本省令は、当初の公表案を若干修正し、同規則第102条の2を改正して、ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に、顧客が65歳未満で、年収800万以上又は金融資産2000万以上を有する者について、顧客の理解度を確認し、投資上限額を設定するなどの要件を満たした場合に、訪問や電話勧誘を許容する例外規定を盛り込んだものである。
しかし、商品先物取引における不招請勧誘禁止規制は、業者による不当勧誘と手数料稼ぎなどから、深刻な被害が長年にわたって多数発生し、度重なる規制の強化によってもトラブルが解消しなかったため、与野党一致のもと、2009年7月に法改正の上、導入されたものである(2011年1月施行)。その結果、商品先物取引に関するトラブルは大きく減少し、同規定が違法勧誘と消費者トラブルの抑止に大いに寄与したと評価されている。
経済産業省及び農林水産省が2014年4月5日に発表した規則改正案(70歳未満で、理解度確認を行い、7日間の熟慮期間などを設定した契約)に対しては、日弁連や各地の弁護士会、数多くの消費者団体が不招請勧誘禁止規制を大幅緩和する改正案に反対意見を表明し、内閣府消費者委員会も2014年4月8日に不招請勧誘を事実上解禁する改正案に深く憂慮し、再考を求める意見を出した。
にもかかわらず、経済産業省及び農林水産省は、今回、商品取引所の出来高減少を理由として、本来、違法勧誘の抑止に最も寄与してきた不招請勧誘禁止規定を大幅に緩和するもので、消費者委員会や数多くの消費者団体の意見を無視し、消費者保護に携わる関係者の多年の努力によって整備されてきた消費者保護法制を大きく後退させるもので、明らかに不当である。
他方、金融庁は、金融商品取引法の下での商品デリバティブ取引に関し、消費者団体や消費者委員会の意見などをふまえ、2014年8月に施行令及び内閣府令を改正し、一定の取引関係にない個人顧客に対する訪問や電話による勧誘意思の確認を禁止した(同年9月1日施行)。その内容は概ね消費者団体等から高く評価されているが、経済産業省及び農林水産省が定めた本省令は、これら金融商品取引法の規制とも全く整合性がとれないものである。
そもそも、商品先物取引は、投機性の最も高い取引の一つであり、商品相場に関する深い知識と投資判断力、及び相当の余裕資金を有する者であって、自らの意思で積極的に取引に参加する意欲のある投資家に限るべきものである。65歳未満であることや、一定の年収や金融資産を有するとしても、商品先物取引の危険性を理解し、積極的に投機取引を行うにふさわしいとは到底いえない。
不招請勧誘禁止規制が施行されて以降も、個人顧客に対し、金の現物取引やスマートCX取引(損失限定取引)を勧誘して接点をもつや、すぐさま通常の先物取引を勧誘し、多額の損失を与える被害が少なからず報告されている実情からすれば、本省令により、再び先物取引被害が急増することが懸念される。
本省令は、一定の年齢や一定の年収又は金融資産を要件とするものの、その要件を満たすかどうかの確認は、電話または訪問によってなされるから、本省令は、結果として、電話や訪問による勧誘を無制約に許容するものであって、法律が禁止した不招請勧誘を骨抜きにするものである。
また、顧客に対し、年収や金融資産の確認の方法として、申告書面を差し入れさせたり、書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法は、いずれも、これまでも多くの商品先物業者が事実上行っていたもので、その中で業者が顧客を誘導して事実と異なる申告をさせたり、正答を教授するなどの行為が行われたことに鑑みれば、これらの手法が委託者保護のために十分機能するとは到底いえない。
近年、振り込め詐欺や架空投資詐欺などの特殊詐欺被害が蔓延し、2014年の被害額は559億円を超え、過去最悪であると発表されており、これら被害を食い止める意味でも、訪問や電話による勧誘の規制はむしろ拡大すべきものである。
当研究会は、2014年4月5日付けで公表及び意見募集がなされた商品先物取引法施行規則改正案に対し、同年4月16日付け意見書において、これに反対する意見を表明したが、本省令は、上記改正案を手直したものの、基本的に不招請勧誘の禁止規定の原則と例外を逆転させるものであって、消費者保護の観点から許容することができず、また、法律の委任の範囲を超えて違法であるから、直ちに改廃するよう強く求める。
以上
2014年省令案と反対意見
経産省・農水省の規則改正案
一連のこの問題の資料、意見書
代表となる意見書URL
資料
- 反対意見用のイメージ図(PDF)
- 意見書サンプル(Word DOCファイルダウンロード)
- NHK解説委員室(4月22日)ここに注目! 「商品先物取引の規制緩和に「待った!」」
- 毎日新聞(4月22日)商品先物取引:「高齢者被害防げぬ」規制緩和に反発
- 中日新聞(4月17日)規制緩和策に批判噴出 商品先物取引の勧誘